戦国の覇者とは、「プロパガンダ」のチャンピオンである
ビジネスマンもヒントにできる戦国武将の策略
■通説の中に巧妙にまじるプロパガンダ
しかし、これを全部信じているとしたら、見事に騙されています。
もちろん全部が噓ではありませんが、本当の話の中に、自分に都合の良いような噓を巧妙に混ぜています。だから巧妙なプロパガンダなのです。
日本人が知っている徳川家康の話は、基本的に山岡荘八の小説『徳川家康』全26巻(1950年~1967年 北海道新聞・東京新聞・中日新聞・西日本新聞連載)がベースです。この本は、家康が59歳までの苦難の人生を耐え抜き、天下人になる生涯を描いています。ただでさえ長い本なのですが、苦難の話が21巻まで続くので、読むほうにも忍耐力が要求されます。名作歴史小説にありがちなことですが、あることないことを面白おかしく書いてあるので、これを全部信じていては騙されてしまいます。
それはさておき、通説に交じっているプロパガンダを一つ一つ解説しましょう。
まず、プロパガンダには意思があります。
この場合、家康の「徳川家の天下が続くように」という意思です。目的と言い換えても構いません。こうしたストーリーを人々に信じ込ませることによって、徳川家を安泰にさせる狙いがあったのでしょう。家康(と、おそらくブレーンである側近たち)は、歴史認識が「武器」だと熟知していたのです。
なぜ熟知していたと言えるか。
家康と三河武士団が勝ち抜いた戦国時代は、プロパガンダ合戦のオンパレードだからです。
代表的な戦国大名を例に、戦国時代とはどのような時代かを次に説明しましょう。